もやもやずぶちゃん

旧ずぶ邸あるじのイントンコントン日記

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ゆめうつつ、半信半疑の

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かわいいか、かわいくないか①「ゆ」

へろー!「かわいいデモ」をしている、やかましです。

 

「何かを変えようと思うなら自分から…」的なことを前回書いたのですが、書いておきながら全然できていないやーんと思うことが多々ありました。

 

くれくれスネスネ虫であり、ぼやき魔(※ツイッターは氷山の一角であります)であり、先回りの妄想族でいつも独り相撲ばかりをしている、やかましです。

 

今回は困ったときに読む『家庭の医学』的に本棚に置いている 

精神科医で作詞家である北山修氏の意味としての心 ――「私」の精神分析用語辞典

 を手に取りました。

 

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前に読んだ時もおもしろいと思ったのですが(どんなふうにだったかは忘れました)、今回もまたおもしろいと思いました(今回は書いておきましょうね)。

 

さて!

この本のサブタイトルが「私の」辞典であるところがもう好きです。

 

一人の人による「責任編集」の雑誌が好きなのですが、同様に辞書も「誰の」意見なのかっていうのは文学を専攻した身には(?)まず気になるところなのです。「誰の」意見かは必ず分かっていないといけないし、辞書は(も)編纂者による傾向があり、解釈よりも用例(作品の中に出てくる使用例、生きたことば)を自分で読んで考えることが大事と学びました。仰々しくどっしりとして、いかにも「これが答えです!」って風貌の辞書の解釈を批判的に読む訓練が、すごく今に生きていると思います(よってさらに社会不適合傾向も加速したのですが本望です)。

 

(そういえば、ベテランの国語の先生に電子辞書を使っているのを揶揄されたことがあるのですが←と5、6年前のことをまだ根に持つが、いろんな辞書の用例を見たほうがいいし、広辞苑、古語辞典、漢和辞典も語源や言葉の歴史を考えるのに、とてもえーじゃないかーーー?! 紙の辞書も全貌や前後がわかりやすかったりあたたかみ?風情?←皮肉に聞こえるが、もあったりかもしれんけど、道具は使いようで自分で考えられるようになることが一番大事な目標ではないでしょうか! とこんなところでまたぼやき魔登場)

 

この「誰の」という明記がある書物は雑誌であれ、辞典であれ、「文学」だなー「人間」だなーと思うのです。例)白川静氏の『字統』など。

そういう「文学」も好きなんですな。独創的な解釈。「文学」というのは個人的で反社会的な考えやら空想やらを、社会的にしていく方法、かわいいデモだと思うんです。

 

この辞典は「私の」とある時点で、最初から「主観的」であり「個人的」であることをはっきりと表明していて、権威的ではなく、だからこそ普通の辞典以上に「個人の解釈」を心置きなく堪能できるのです。こういう辞典は私も作ってみたいな。(辞典づくりって憧れませんか?)

 

しかもその「個人」である北山修氏は精神科医でありながら、創作活動もしている方なので、学術界、医療界だけにとらわれないボーダレス、ジャンルレスでぬえ的で(実際「ぬえ」ということばも本の中に何回か登場しています)。創作的な実践的なところも自分に合っているような気がします。フォーククルセダーズを久々に聴いて、プロすぎないゆるさ、奇妙なあぶなっかしさなどなど、目指している感じに思えてきました。かわいい。そういえば「あのすばらしい愛をもう一度」は何年か前にずぶの学校の学芸会で鼻歌まじりに歌いましたな。(奇しくも、聴いていたのが加藤和彦氏が亡くなった10年後の10月17日だったとは…今知りました)

 

しかも作詞・・・という創作は今まさに私がやり始めていて今後もやっていきたいと思っている創作です(夢はシンガーソングライター)。ことばの「音」に着目した自由で確固たる連想をもって、ことばを分析しています。

 

今回、特に好きだと思った項をいくつかご紹介します。

 

▽許し、緩し

『日本語源大辞典』(小学館)では「ゆ(湯)」の語源として、次のような「ゆるむこと」「ゆるし」が出てきます。これは日本語を使用する人なら、多くが納得するところでしょう。

温む意で、ユルミ(緩)の義[名言通]。微温の意でユ(寛)の義か[日本語源=賀茂百樹]。冷水では縮まるようであったものが、沸かすと身もゆるやかになるところから、ユルシの略か[日本母声伝]。

 

▽「ゆ」と読む漢字

語源説には自由な連想や思いつきもあるとしても、深層心理学にとってはこのような連想こそ重要な手がかりです。そこでこの、ユという音が意味するところを、漢語を構成して「ゆ」と読ませる漢字を並べて俯瞰してみるなら、面白い思想のあることが分かります。『日本国語大辞典』(小学館)から「ゆ」の音で読まれる漢字をあげておきましょう。これは、「ゆ」の境地に関する緩いが強力な例証なのですが、見たことがあっても、使ったことのない未使用の漢語では価値がないし、「ゆ」と読めないのでは意味がないので、知っていて読めるものしか引用しないことにし、三分の一くらい削除しました。読者がこれまで使われたものやこれ以外に知っているものが抜けていると感じられたなら、典拠は公刊の書物ですから読者が付け加えられたらよいと思います。

 

⑴由の類

「由」よりどころ。いわれ。わけ。「油」あぶら。「柚」みかん科の常緑樹。

⑵甬の類

「勇」いさましい。「湧」わきでる。

⑶(省略)

⑷兪の類

「愉」たのしむ。たのしい。よろこばしい。「諭」みちびく。さとす。さとる。「輸」他へ移す。はこぶ。おくる。「喩」①おしえさとす。さとる。さとり。②たとえる。たとえ。「揄」からかう。「癒」病気や傷がなおる。いえる。

⑸その他

「遊」あそぶ。自由に歩きまわる。

 

このようにして、「ゆ」や、加えて裕、優、雄、有、由など「ゆう」と読ませる漢字の意味を渉猟して得られる大きな発見は、人間や人間関係におけるポジティブな経験をカバーしていることです。これを私見で総合するなら、根拠と余裕を持ち自己中心的で、人目を気にしない「私」が内側から大きな広がりをもって湧き出して「ある」のです。これを支える「ゆるみ」「ゆるし」が基本的条件になって揃うと、私たちは「私がいる」「自分がいる」と感じ、時に「極楽、極楽」と言う人もいます。つまり私たちは「ゆ」の中で生まれるこういう楽観的な感覚を基盤に、心の痛みや疲れを癒して生きているのだと思うのです。

 

精神分析の関心

自由連想の由(ユウ)、遊戯療法の遊(ユウ)、夢分析の夢(ユメ)と、精神分析の関心が「ゆ」の音を巡ることも興味深いことです。阿闍世コンプレックスの「許される罪悪感」論における「ゆるし」とはユックリとユッタリとして、ユルユルとした世界に身を置くことだと考えられます。そして、心の健康において何よりも必要な「ゆとり」や「よゆう」を言う時にユは繰り返され中井久夫が論じる「ゆとり」は説得力のある論考ですし、最近では藤山直樹が「揺らぎ」という言葉を使用しています。こうして私は、音のレベルで私たちの精神医学や精神分析の関心事が「ゆ」に導かれて展開しているように思うのです。

 

▽「ゆ」を楽しめない

そして、この「ゆ」の境地が意義深いのは、それに冷める(覚める)という現実回帰や覚醒があるからです。患者さんたちには、この「ゆ」の経験をいけないもの、許されないものとしていることが多いのです。ゆるんだ状態を禁止されていると感じる多くの神経症者たちに共通するのは、その自己中心性や尊大さが批判されるという心配や、覚める際の恐怖が生じることでしょう。またその身を収納する体(殻だ)や「心の皮膚」がないために「ゆ」に近づけない人や、傷に滲みるために「ゆ」につかれない人もいて、それらは「ゆ」の剥奪や喪失のケースだと言えるでしょう。そして「斎」を「ゆ」と読んで神聖清浄を意味することがあり、そういう「ゆ」が過剰になると「ゆゆしき」となって非常事態となるようです。さらに「ゆゆしき」は例によって意味がぶれる言葉で、賞賛の意味でも使われるのが興味深いところです。そして、臨床的には「癒(ユ)」が求められるのですが、ここに精神分析の言う退行regressionを経た進行progressionの意味で自然治癒や現実的な洞察の可能性を想定できるのです。

 

私の「好きなものリスト」にランクインしている、お「湯」

遊びをせんとや生まれけんが合言葉の旧ずぶ邸の「遊」

自由のものさし一本で生きたいずぶの学校の「由」

「自らの分」を認められて(許されて)存在するということの「有」

 

ずっと「ゆ」の音が好きだったことに気がつきました。

そのひとの言葉を、心を傾聴することがそのひとの存在を許すこと。許し、許されているという関係。・・・大人になっても、悠長に、ゆるゆる(許る・聴る)生きてみる時間があっていい。

zubunogakkou.hatenablog.com

 

そうだそうだ、「悠長」を足しておかないとね。自由に付け足してくださいって書いてある。

 

学校(私)に欠けていた余白、ゆとり、スコーレ(閑)…

それは、ゆるされないものじゃないということをみんなで確認して

どんどんゆるしていきたいのです。

大丈夫、この流れは世の中の流れに反している(デモ)なので

どんどんゆるしても「ゆゆしき」事態にはそうそうならないとみています。

一度「ゆゆし」くなってみて、わかることもあろうて…

緊張のあとのゆるみ。休み休み、リラックスの必要性。

このような気づきによる「かしこいゆるさ」は、かわいいと思います。

 

 

つづく…

zubunogakkou.hatenablog.com