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IKEMEN~10年後の僕に~ 【ロングインタビュー】坂井達哉

坂井達哉 Tatsuya Sakai

都心にそびえる高級タワーマンションの一室。扉を開くと一変、ぬくもりのある木のにおいが広がった。坂井建築事務所(兵庫県川西市がリノベーションを手がけたモデルルームにて出迎えてくれたのは、らくだ色の作業着姿の坂井達哉さん。父の後ろ姿を見て育ち、自らが憧れる方へまっすぐまっすぐ向かっていく射手座、28歳。

スタイリング・末川マキ 撮影・さくらまみ 文章・あかまつみさき

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タワーマンションのベランダにて

 

国産無垢材を使用して木だわり(こだわり)の家を建てる「坂井建築事務所」は、これまで精力的に取り組んできた「新築」「古民家再生」に加えて、「マンションリノベーション」を三本目の柱としていきたいと考えている。背景には、新築着工数の減少がある。近年、マンションのリフォームを依頼されることが多くなり、ついに本腰を入れる構えだ。

 

「僕は楽しかったらなんでもいい」と笑う、自称「くそポジティブ」な同建築事務所の坂井達哉さん(28)。代表取締役である父の背中を追ってここまできた。達哉さんの祖父は、和歌山県株式会社「坂井家起こし」を立ち上げ、神社、仏閣を起こしたり移築したりしており、その流れで父信夫さんも古民家再生に携わっていた。市街を一望できる自宅兼事務所も、和歌山県から古民家を移築して建てられたものだ。「坂井家起こし」は、達哉さんのいとこが跡を継いで三代目となった。達哉さんは二年前、勤めていた会社を辞め、父の建築事務所に入った。

 

「家を建てるひとが10人いたら7人はハウスメーカー、残りの3人のうちの1人がうちにくるかどうか。いつでもひやひや、ずっと背水の陣みたいな感じですね。社員6人、パートさん1人、大工の棟梁が3人。会社の規模が小さく、何かあれば一撃で吹き飛ぶレベルなんで。」

 

さらに、国のエネルギー政策の一環で、2030年までにZEH(ゼッチ=「快適な室内環境」と、「年間で消費する住宅のエネルギー量が正味で概ねゼロ以下」を同時に実現する住宅)を普及していく流れにあることも、建築をとりまく厳しい状況に拍車をかける。「そうなってくると、うちと単価が合わない。僕らは自分らの仕事を高いと思ってないけど、外から見ると高いでしょ。そう言われてしまうから。」さらっとした発言の中に、自分達の仕事に対する確固たる自信が垣間見える。

 

大阪工業大学に入ったものの、バンドにのめりこんでやめたのは20歳の時。それでも建築業界に入ったのは、「100パーセント親父の影響」だという。そこはぶれたことはない。

 

「中学生の時には決めてました。変われないという面では定評があります。頑固ですね。24歳にもなって、友達に『でかいくそがき』って言われたんですよ(笑)建築に関しては、あのおっちゃん(父)もすごい仕事をしてると思うんですけど、からしたら、うちの親父こそが『でかいくそがき』ですね。美術館とか立ち入り禁止のとこに勝手に入っていくんですよ。たちの悪いこどもです。」

 

と、父の仕事に対する尊敬の念は固く、親子だけあってすでによく似ているようだ。事務所を切り盛りする母のり子さんの影響については、「ようしゃべることですかね、三日間はしゃべり続けられます。」と語る。明るく、気さくな一面は、母譲り。

 

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定食屋でお昼ご飯

両親以外にも強く影響を受けた人物がいる。

「前働いていた会社で一部署をおさめていた「黒田店長」は、もう僕の中のヒーロー。めっちゃかっこいいんですよ。かっこいい意味で面倒見がよくて。なんでもやってこい! 責任は全部俺がとったる! みたいな。そしてふざけるときは誰よりもふざける。こんな大人になりたいと思ってます。(当時)40代なかばぐらいですかね。娘が部活入るっていって買ったギターを家で親父が弾いてるっていう。めっちいいなぁと思って。憧れですね。このひとのためやったら、どんだけでも、なんでもしようと思えるひとです。」と少年のように目を輝かせて話す姿を見ていると、でっかいこども説はどうやら濃厚。

                    

そんな坂井さんは現在、家探し中だそう。二階玄関のウッドデッキのついた家や、池田の猪名川沿いにある見晴らしの良い家を見つけたが、条件が合わず、なかなか決まらない。やはり家にはただならぬこだわりがあるようだ。

 

「外に出るのは好きやけど、人混みは苦手。用がなかったら一切家から出ないんです。単純に家におるのが割と好きっていう。周りの友達から、ちょっと奥地に住むの禁止されてるんですよ、能勢口とか池田とか、すぐ飲みに行けるところにしなさいって謎の指令が出てて。ひきこもるし、基本連絡取らないんですよね僕。またお前の消息がまたわからんくなるって、心配されてるみたい。」

 

友人にもめっぽう愛されている模様だが、本人はいたってクールで、存外どっしりとしたインドア派。シュッとした外見とは裏腹にパーティやイベントなどの社交界は苦手。純粋に楽しみたいので、飲み会も基本的に4人までという。そのうち一人でも気を遣うひとがいたら参加しないと決めている。かたくな!

 

「家では漫画読むか、ゲームするか、パソコンいじってるか。去年、電子ドラム買うたんで練習するか。『独身貴族』ってなんやろうって考えた時に、あ、そうか、高価なもん買わなあかん! と思って。この会社来て貯めたお金で、よし使おう! と思って買うたんです、ドラム(笑)」

 

このように友人にも生存を危ぶまれるほど大の連絡不精のようで、大事なことはメールやラインなどで送られても読まない。「せめて電話してきてほしい。会ってしゃべるのが一番!」と、ところどころ律儀で古風。

 

「以前の彼女とも連絡とらなくて怒られてました。ちゃんと返すんですけどね……言うたらメールとかラインとかって手紙でしょ、手紙が10分後に返って来ると思うなよ(笑)送ったら着くの翌日みたいな。返事は三日後までは待て、みたいな(笑)」

 

……して、気になる「好きな異性のタイプ」は?? 大人になって少し変化があったそうだ。

 

「今は、自由にさせてくれてるようで、うまく手玉に取って転がしてくれるようなひとがいいんだと気が付きました。がつがつ来られるのは苦手です、追いかけられると逃げるんで。適度に追いかけてる方が幸せ……かといって何もしないけど。気持ち的な問題ですかね。」 それって追いかけられてるってわからんやん……恋愛に関してもインドア派のよう。

 

「10年前、バンド活動をしていたころは、アメカジに、ツイストパーマの風貌で、ついたあだ名が『ライオン』『モップ』……しゃべったことのない大学で「絶対怒らせたらあかん奴」「やばい奴」という悪評が立ってたそうです。ただ、表向きはつーんてしてましたけど、心の中ではさびしいなーって泣いてましたよ(笑)。成人式は袴を着ました。女性は着物を着るんだから男もちゃんとせな!と思って、19の時からせっせと髪のばして肩下まで。ちょうどそのころ流行ってた漫画『バガボンド』に憧れたんですね。

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10年後は38歳。

その目にはどんな景色が見えているのだろう。

 

「したいこと……バックパッカーかな。シルクロードを歩きたい。今の予定では、65歳で会社引退して、旅に出る。あ、ヨーロッパスタートで家に帰ってくる方がいいな。最後に残ったお金で上海で遊んで帰ってきます!」まだ「バガボンド(放浪者)」の夢は続いているのかもしれない。でも家に帰ってくるところは、やっぱりインドア派! そして武士。

 

*Profile*

さかいたつや◎1988年11月23日、兵庫県生まれ。九歳上と七歳上の姉がいる。「姉貴二人おったらもう事故です。かわいがられるというか……おもちゃです。」173センチ。B型。好きな漫画は『GON』

 

坂井建築事務所HPはこちら

kinosumai.jp

 

この記事はらくだ出版(宇宙友朋会)発行の「KAMELO(ラクダ)」2017年5月号に所収されています。800円です。お買い求めはy.mishima888@gmail.comまでご連絡ください。

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KAMELO(2017.5)表紙