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わたしの宇宙船操縦法【ロングインタビュー】さくらまみ

わたしの宇宙船操縦法 ~teraco(テラコ)と部活動~

 

15年の4月末に、清荒神宝塚市)にオープンした平屋スペース「teraco(テラコ)」 約一年半の運営期間を経て、昨年10月から新たに、「部活動」と称し「テラコブラクダ」の活動を開始しました。「テラコ」とはどのような場所なのか。また部活動とは? テラコを運営しているさくらまみさん(通称・まみっち)にお話を伺いました。

 

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さくらまみさん(teracoにて)

 

「テラコ」は「余白」

阪急清荒神の駅から徒歩5分のところに趣のある平屋を見つけたことから、オープンへの道が見え始めた。以前からずっと考えていたことは、女性がしなやかに働ける、新たな仕事を生み出せる場所作り。「仕事休まれへんねん」とか、「こんな仕事しかできへんねん」などと嘆いている友人たちが、日々感じている重圧を少しでも解消できたらという思いもあった。窮屈な現実に、ぽっかり空いた穴。何もない、日常から少し離れた場所。それが「テラコ」。「余白」とも言える。

 

最初は広く知ってもらうためにカフェとして開いていました。いろんなひとがカフェに来て楽しく過ごし、きらきらして帰っていくのは良かったのですが、私はなぜかどっと疲れました。カフェがしたかったわけでもなく、お金も持ち出しだったので。一年間やりたくないことをあえてするという経験をして、たくさん勉強させてもらいました。

 

開業当初から「考えることが未来を創る」という言葉がずっと心の中にあります。テラコのような空間的な「余白」は、考える時間を生み出すんです。自分の中でこんがらがった問題をいったんほぐして、ひとと、自分と、一緒に考える時間を持つことで未来に目が向いていけばいいですよね。

 

自分も含め女性の多くは、夫やこどもに依存して、自分で自分をがんじがらめにしている面も否めないのではないでしょうか。依存はしてもいいと思うのですが、自ら決断すべき肝心なところで、折れてしまったり、他人にゆだねてしまったりすることは課題だと思っています。

 

自分の気持ちに忠実に動こうと思ったら、それなりの、自分に対する責任や、周りに対する責任が生まれるので。自分が関わっていることに対して、ちゃんと責任がとれるひとと一緒に仕事がしたいなぁと思うようになりました。こう振り返ってみると、しんどかった一年もやはり必要だったのだと今は思えます。でないと、みんなに出会えていないから。孤独を知っているからこそ、誰かと何かをやることの良さもわかるから。

 

 

「人間ライブラリー」としての部活動「テラコブラクダ」

「らくだ図書」という小さな図書館をテラコに併設したのが「テラコブラクダ」の最初の活動。部員たちがおすすめの本を持ちより、ひとつの本棚に並べている。提供者によって一押しポイントがこっそりメモ書きされているのが嬉しい。はてさて、テラコを拠点に活動する部活動「テラコブラクダ」は、これからいったいどういった活動をしていくのでしょうか?

 

現在、部員としては、私を入れて14名の精鋭が集まったことに感激しています。出会って間もないひとも数人いてびっくり。それぞれの得意なことを出しあい、不得意なことを補いあいながら何かをなしとげていく。自分の仕事を拡大しつつ、チームワークでシェアできるところはシェアして大きくなっていく。一人ではできないこと、やってみたかったけれどやったことのないことを実際にやってみるという活動をする予定です。現在は4月のテラコブラクダ主催の初の文化祭「顔と顔(Face to fes)」に向け、キャラバンを組んで、じわじわ進行中。

 

部員には「動物のホリスティック専門病院」「刺さない鍼」「瞑想」「声のワークショップ」などそれぞれ一風変わった専門のお仕事を個人でされている方もいれば、今までの自分を少し見直す時間や場所を求めてやってきた方もいる。そういった個性豊かな面々によって、入れかわり立ちかわり、次から次へとおもしろいお話が繰り出されるテラコは、さながら人間ライブラリーといった様相を呈しつつある……あ! これが真のらくだ図書か?! 「部活動」というかたちで、長期的につながっていくかたちを考えたのも女性らしい柔軟な発想からだ。

 

単発で大々的にイベントをしても、燃え尽きてその後三か月何もしないとなると、もったいない。集客できなかったとしても、誰かと何かをやることで発見があったりもする。人数よりも、一人でも個性的なひと、その後も関係が続いていくようなひとと出会えるほうが大きい。このことはカフェをひとりでやっているときにも思ったのですが、出会いにはお金に代えがたい価値があります。

 

また部員には、部活動に所属することで、家庭とも職場とも異なる環境にいる自分の存在を認め、新たなアイデンティティの可能性を見出してもらえたらいいなと思っているので、ある程度長期的にひととつきあって関係性を築いていくことも自己表現のための一つの試みになるのではないでしょうか。もちろん、無理のない範囲でですが。

 

部活動には、よしあしの判断を自分でできるひと、主体的に動く姿勢を持っているひとが集まってくれています。かといって、敷居が高いわけじゃなく、誰でも参加できるオープンな活動にしたい。単にフリースペースを共有するだけの団体ではない。もちろん目先の利益を追求するのでもない。団体行動を強制するような組織でもなく、お互いを尊重し合いながら、異なる楽器をともに奏でるようなクリエイティブな気持ちで、ノリに乗りながら、ゆるく、深く、じんわりとつながっていきたいです。

 

インターネット、SNSが発達した便利な社会で、わざわざ一つの場所に足を運び、直接会って話す。顔と顔のつながりを持つことで、自分と異なる意見、違う仕事を持つひとを否定せずにゆるやかに協力しあうことを大切にしたいという考えが根底にあって、先のイベント名(『顔と顔(face to fes)』)が生まれた。おもしろいひとや仕事を広く紹介していくことで、地域に貢献し、ローカルなスターをぽんぽん輩出していくのも野望のひとつ。

 

部長・さくらまみ

テラコの「オーナー」と呼ばれることをかたくなに拒否するさくらさん。自身もHP作成やロゴ・名刺・フライヤーなどのデザイン、動画や冊子の編集、イベントの企画など多岐にわたる仕事をしており、部員たちと同様、個人での活動もしている。部活動が始まってからは、「部長」という肩書が妙にしっくりきてお気に入りだそう。その理由を、首をかしげて考えること数分……話は中学時代にまでさかのぼった。

 

そういえば全員が部活動に入らないといけないというルールのある学校にいて、一人だけ頑として入ってなかったな。美術部みたいな、文化部に入りたかったのに、運動部しかなかったからか……一時期テニス部に入ってみたこともあったけど、先輩が変にかっこつけているのとかも無理やったし、そもそもなんで勝たなあかんねんとか思っちゃって(笑)。ほうきを持った先輩に呼び出されたりもしたけど、結局三年間帰宅部を貫いて、帰っていっつも「四時ですよーだ」を見ていました。というわけで、団体行動には慎重です。個人の意志を尊重する、団体でありたいと常に心がけています。『なんでやりたくないことをルールだからってやらなあかんの?』と自分自身が思っていたので。区切ったり、決めたりすると死んでいくものがある。何事も決めつけたらあかん。難しくても、生の関係を大切にしていく。

 

大人でも部活動をしたい。いや、大人だからこそ、それぞれ磨いてきた能力や経験、人生を賭けて、よりクオリティの高い遊び(仕事)ができるのではないか。最初に声をあげたものとしての責任を果たしつつ、リーダーではあるが部員とは対等で、同じ側に立っていたいという思いが強い。既存の社会や組織の構造そのものを自分自身で問い直して、新たに作り上げていくといったクリエイティブな活動にしたい。未熟で失敗することも多々あるだろう。そういう過程を「味」として堪能していけることが楽しい。ひとりではないのだ。さくらさんの、真の部活動の追求は続きます。

 

*Profile*

さくらまみ・写真家/グラフィックデザイナー/展開アンバサダー

teraco(宇宙船)は冒険枠 

https://www.facebook.com/asahiteraco/

 

文・あかまつみさき(ずぶの学校校長・高校国語教師)

 

 

この記事の一部はらくだ出版(宇宙友朋会)発行の「KAMELO(ラクダ)」2017年5月号に所収されています。800円です。お買い求めはy.mishima888@gmail.comまでご連絡ください。 

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KAMELO(2017.5)表紙