「何料理ですか?」と聞かれたら、お客さんに問い返してみたい。「何やと思う?」あえて表現するならば、「創作和風フレンチイタリアン」?
行くたびにメニューが違う。パスタにオムライス、魚料理、肉料理。最近登場したのは、「オムカレー」。どれも優しいお味ばかりのメニューの中でひときわ異彩を放つ、ピリ辛「和楽カレー」。その上に半熟のオムレツをのせたものがオムカレーだ。辛いのが苦手な方はこちらをどうぞ。
都会の田舎 中崎町
近年、脚光を浴びている中崎町。古い町並みや、おしゃれなカフェ、美容院、古着屋などが軒をつらね、休日は若者や海外からの観光客でにぎわう。「ダイニング和楽」の寺口清美さんはここ中崎町で生まれ育った。中崎町のある済美地区は急速にこどもの数が減少し、寺口さんが通った済美小学校も十数年前に廃校になったが、今でも夏になると豊崎神社のお祭りに向けて、毎年熱心に笛や太鼓、舞などの練習が行われ、近所のこどもを叱ってくれる昔ながらのおじさんたちも健在だという。こうした新旧入り混じったまちの表情は、時間によって、季節によって様変わりする。
「小さいからこそ」
「単身赴任の方、仕事帰りの方、飲まない日はここ!と決めてはるひともいるみたい。平日の夜は、一人のお客さんが多いね。ゆっくり静かに食事をしたいという感じかな。奥さんが飲み会に行ったからとか、出産間近で里に帰っているからとかで、男性一人でいらっしゃったりとか。」
お客さんの要望には応えられるだけ応えたいとのこと。例えば、エビとほうれんそうのメニューも、アスパラが好きだからという理由で「ほうれんそうをアスパラに変えて」と言われたって、材料さえあれば問題ない。健康を意識してもともとバターや油の使用は控えめだが、さらに塩控えめに変更するパターンもある。オーナーシェフのご主人寺口順二さんは、以前学校や病院などの給食を作る会社に勤めた経験を持っており、アレルギーに関しても二つ返事で対応する。
「聞ける範囲のことは聞きたい。大きなレストランではしにくい、個別の対応。小さいなりに、小さいからこそ、できることがあんねん。」
まちの背景に溶け込んで
震災で家を建て替えると、ほどなく中崎町が注目を集め始めた。テレビ取材が押し寄せたが、いつもバック。前に並ぶ古民家群が目当てだ。
こどもが成人したのを機に一階のガレージを改造し、外壁を赤く塗って、ついに三年前ご主人の念願の夢であった自宅レストランをオープンした。59歳だった。
「一日一日を無事過ごすように」「できるだけ長く続けたい」というのがお二人の野望だ。
最近お店に足しげく通うのは、就職活動をやめ、近所でひとり古着屋を始めたという若者。アットホームな、やさしい雰囲気がお気にいりで、テイクアウトもたびたび利用しているとか。若いひとに「お父さん」「お母さん」と慕われるご夫婦は、今日もまちのひとたちの心と体の健康をがっしりと支えている。
文・あかまつみさき(高校国語教師。ずぶの学校校長。)
DINING WARAKU 和楽
〒530-0015 大阪市北区中崎西1-1-9-11