もやもやずぶちゃん

旧ずぶ邸あるじのイントンコントン日記

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詩歌の世界へようこそ 「葉ね文庫」という場所  

 

2014年12月に開店した「葉ね文庫」(中崎西・サクラビル)は、歌集・句集・詩集の新本を中心に、小説や漫画の古本も取り扱う一風変わった本屋である。昭和を感じさせるレトロなビルの一室にある店内には靴を脱いで上がる。赤いじゅうたんの上で、青い壁を眺めながら、店主の池上規公子さんにこれまでのお話を伺った。

 

――あるとき、インターネット関連のセミナーである小説家に出会いました。グループワークの時にむきだしでけんかしていたのが強烈に印象的なひとで。(笑)突然そのひとに、自分が書いた小説を読んで評価してほしいと頼まれました。おもしろいひとやなぁと思ったので会ってみると、原稿を大切にしていて持ち帰ることを許してくれない。メールで簡単に送れる時代に、そういう感覚のずれが新鮮でした。小説は、驚くほどおもしろかった。ぽっとそこにいたひとがこんなに面白いものを書くんやったら世の中にはおもしろい本がいっぱいあるんやろなぁ。私がまだ出会っていないだけで。もっと本に関わっていきたいと強く思いました。

 

体育会系の家庭に育ったので、自宅に本はほとんどなく、たまたま友人のお母さんに連れられて行った図書館で本の魅力に憑りつかれました。「めっちゃおもしろいもん見つけた!」と一人でひたすら本を読みふけって、幼稚園の先生にも心配されるほど。以来ずっと本が大好きだったのですが、なんとなくいつも何かに邪魔されているという感覚がありました。

 

社会人になると、ますます時間がなくなって。ウェブデザイナープログラマーの仕事は睡眠時間3時間を確保するのがやっとの生活。30代後半でゆっくり働きたいと考え、ウェブ解析士の資格をとってこれでやっていけると考えていた頃に、その小説家に言われたんです、「その仕事、めっちゃしょうもなくない?」って。もちろんカチンときたのですが、これまで封印してきた気持ちがばれたとも思いましたね。もう後戻りできない、よし、古本屋になろう、と決心しました。自分がこの世で最もかっこいいと思うひと、それが「古本屋の親父」だったんです。そして、本をむさぼり読んでいた幼いころの自分。あのときの自分が一番かっこいい。やっぱり本に囲まれる仕事がしたい。

 

ツイッターで「本屋になる」とつぶやくと、以前から細々とつながっていたあるひとから声をかけられました。そのひとは壁紙のプランナーの方で、会って話をしている最中に、イメージをすらすらと絵に描いていきました。まんなかに机が四つあって、机の上には巨大な塔がそびえ、塔には本やことばが刺さっている。「じゅうたんがいいと思いますよ」などと言われているうちに、これは普通の本屋ではなくて、ちょっとおもしろい場所を作ろうと思うようになりました。それでお金もいるので、今のかたちになりました――

 

池上さんは現在、平日昼間は会社員として働きながら、火、木、金曜日の夜と、土曜日に「葉ね文庫」を営業している。詩歌専門の本屋にしたことで、夜は創作する者たちが集い、文学談義や勉強会が繰り広げられ、部室のような空間に。最近は、壁に詩や絵などの作品発表をするギャラリーのような一角も現れた。「葉ね文庫」という場所を愛する、何かやりたいという人々がどんどん集まってくる。その中心には池上さんの存在が。

 

「いきあたりばったりでいろんな人に刺激を受けながらやってきました。出会う時はすごく特別な時。ここにいて、その瞬間に居合わせるって最高にすてきなことです。」

 

葉ね文庫 hanebunko.com

 

ぶん・あかまつみさき